ソフトバンクグループの企業分析シリーズ⑨前篇 ~不可解な自社株買いの真実を探る~

本記事は、第9回に渡って掲載される「ソフトバンクグループのやさしい企業分析!」シリーズの第9回の前篇です。

 

ついにこのシリーズも最終章を迎えました。

今回は企業自体の分析からは離れ、ソフトバンクグループが2020年の3月中旬に急遽不可解なタイミングで発表した「自社株買い」の裏側に迫っていきます。

 

この記事を読むことで、

  • ソフトバンクグループが2020年3月に2度発表した大規模な自社株買いの概要について
  • ソフトバンクグループが大規模な自社株買いを行うと決定するに至った裏側の思惑
  • 大量保有報告書の概要
  • 大量保有報告書の簡単な見方

を知ることができます。

 

物事は疑って深読みをしてみることで、思いもよらない背景が見えてくるものです。

今回も肩の力を抜いて、とにかく楽しむことに重点を置いて読み進めていってください。

 

※今回ご紹介する内容は、あくまで筆者の推測によるものです。

ただし、ただの当て推量ではなくその結論にたどり着いた明確な根拠もご説明します。

すべてをお読みいただいた上で読者様もご自身の結論を導き出してみてください。

 

この記事では、便宜上

  • 「ソフトバンクグループ株式会社」のことを「SBG(ソフトバンクグループ)」
  • 「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」のことを「SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド」

と呼びます。

 

そもそも自社株買いとは

デニム お金

自社株買いとは、企業が既に発行した自社の株式を買い戻すことです。

企業は自社が発行した株式を買い取り(実質的な払い戻し)、その株式を消却することで発行済み株式数を減らすことができます。

 

単純な視点で見れば、自社の資金を使って自社株を買い戻す行為であるためあまりメリットを感じられないようにも思えます。

しかし、自社株買いは様々な目的で行われ、それに伴う様々なメリットが存在します。

 

自社株買いを行う目的とそれに伴うメリット

自社株買いを行う代表的な目的として、株主への利益還元が挙げられます。

 

自社株買いを行うとROE(自己資本利益率)やPER(株価収益率)といった重要な経営指標が改善され、投資家の興味関心を引くことにつながります。

その結果として買い注文が集まれば、株価は自然と上昇していきます。

現に、自社株買いが発表された直後はTOB(株式公開買い付け)が発表された直後のように株価が急上昇もしくはジリジリと長期的に上昇していくことが多いです。

また、何かしらの下落材料がある状況下では、株価の下支えを狙うこともできます。

 

このように自社株買いには株価を引き上げる効果があるため、結果的に株主に利益を還元したことになります。

 

また、自社株買いをすると発行済み株式数が減少するため、企業の利益が減らない限りEPS(1株当たり純利益)とBPS(1株当たり純資産)は増加していくことになります。

これは株主の視点から見ればプラスの要因です。

 

このように、自社株買いには即効性のある株主還元の効果があります。

 

自社株買いを行うことによるデメリット

しかし、自社株買いにはメリットがあるようにデメリットも存在します。

 

前述したとおり、自社株買いをするためには資金を使う必要があります。

当たり前のことですが、資金には本来さまざまな使い道があります。

たとえば設備投資や研究開発、人材を確保するための採用活動や福利厚生など、企業の長期的な成長にとって重要な使い道がたくさんあります。

これらを差し置いて自社株買いを行うということには、企業の長期的成長を阻害する恐れがあるのです。

 

ソフトバンクグループ が2020年3月に過去最大規模の自社株買いを発表

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SBGは、2020年3月に2度も過去最大規模の自社株買いを発表しました。

 

これまでSBGは、株主のアメリカにある有力アクティビストファンド(物言う株主)のエリオット・マネジメントから2兆円規模の自社株買いを要求されてきたので、ついに自社株買いに乗り出したといった格好になります。

 

2020年3月13日に発表した自社株買い

SBGは初め、2020年3月13日に5,000億円の自社株買いを行うと発表しました。

狙いは株主還元の強化と株価引き上げの効果を狙ったものだと言われています。

メディア各社はこの案件を大きく取り上げ、大きな話題となりました。

 

しかしSBGはこれだけに留まらず、この発表の10日後に予想だにしない行動に出ます。

 

2020年3月23日に追加で発表した追加の自社株買い

SBGは5,000億円の自社株買いを発表した10日後の2020年3月23日に、4.5兆円分の資産売却と追加で2.0兆円の自社株買いを行うと発表しました。

狙いは市場の低評価の改善だと言われています。

 

この追加の発表により、自社株買いの合計額は2.5兆円にものぼりました。

これは間違いなく過去最大規模の自社株買いです。

 

ちなみに、残りの2.0兆円分は現預金残高への充当や社債の買い入れを行うことでBS(バランスシート)を改善すると説明しています。

 

ソフトバンクグループが公表した自社株買いの目的

SBGがホームページで行ったプレスリリースで、自社株買いを行う理由を公表しました。

それがこちらです。

softbank IR

会社は株主のものですから、株主還元を充実させるというのは素晴らしいことだと思います。

ただし、この公表を額面通りに受け取ってもいいかというのはまた別の話です。

 

2020年6月25日に行われた株主総会での孫正義氏の発言

孫正義氏は2020年6月25日に行われた株主総会でとある発言をしました。

それは・・・

「当分、配当などは期待しないでほしいというのが正直な気持ち。もちろんいつかはする。できるだけたくさんしたいと思っている。」

というものです。

ただ、足元では株主還元策としてすでに大規模な自社株買いの方針を示して実行してきているということで、

「こちらを中心に株主還元していきたい」と投資家に理解を求めました。

 

筆者は3月23日にものすごい不信感を覚えた

みなさんは、自社株買いを発表したタイミングと自社株買いの規模に何を思われましたでしょうか?

私は3月に行われた2回目の自社株買い発表の時点でものすごい不信感を覚えました。

 

なぜかと言うと、前述したようにこれまでエリオット・マネジメントから2.0兆円規模の自社株買いを要求されてきても応じなかったSBGが、

いわゆるコロナショック(2020年2〜3月に起きた世界的な株の大暴落)の直後にこれだけ大規模な自社株買いを急いで発表したというのは自然ではないと思ったからです。

 

しかも、自社株買いをするということは、先ほども何度かご説明したとおり大切な資金が外に出ていくことを意味します。

コロナウイルスの影響でこれからの世界経済がどうなるかわからないということで様々な企業がキャッシュを貯め込む動きにシフトしようとしている中、

SBGはあろうことか4.5兆円という莫大な資産を売却してまで2.5兆円分の自社株買いに踏み切ったのです。

 

こんなタイミングで発表された過去最大規模の自社株買いの理由が「株主還元の充実のため」と言われても、率直に言ってそう簡単に信じることはできません。

筆者はこれをどうしても自然な流れだとは思えませんでした。

具体的には、是が非でも株価を下支えしたい理由がどこかにあったのかなと疑いました。

why
この時点で筆者は、自社株買いの決定の裏側にある本当の思惑を探ることにしました。

 

そして、6月25日に不信感がさらに強まった

前述した2020年6月25日に行われた株主総会での孫正義氏の発言を聞き、筆者はさらに不信感を強めました。

 

これまで年1%前後の配当をコンスタントに出してきたSBGのトップが、急に当分配当を期待しないでほしいと言い始めました。

つまり、配当による株主還元という方針から自社株買いによる株主還元という方針に大転換をしたということです。

 

これが平時であればそこまで違和感はなかったと思います。

しかし、今回はタイミングがタイミングです。

 

ここで筆者には

  • なぜわざわざこのタイミングで4.5兆円の資産を売却してまで合計2.5兆円の自社株買いをするということを発表したのか
  • なぜわざわざこのタイミングで配当による株主還元という方針から自社株買いによる株主還元という方針に大転換をしたのか

という2つの疑問が湧き上がってきました。

総合的に勘案すると、これらの行動は論理的整合性が乏しいのです。

why
この疑問は、次回深ぼっていきます。一緒に真実をみつけましょう。

まとめ

今回は、ソフトバンクグループが2020年の3月中旬に急遽不可解なタイミングで発表した「自社株買い」の裏側に迫るべく、

  • 自社株買いについての基礎知識
  • 2020年3月に行われた過去最大規模の自社株買い発表があまりにも不自然な根拠

について述べてきました。

 

次回はいよいよ、謎につつまれた自社株買いにメスをいれます。

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