ソフトバンクグループのやさしい企業分析!③ ~ソフトバンクビジョンファンドを徹底解剖!~



 

本記事は、第8回に渡って掲載される「ソフトバンクグループの易しい企業分析!」シリーズの第3回です。

 

第3回では、第2回でソフトバンクグループが大赤字を出した原因なのではないかと予測したソフトバンク・ビジョン・ファンドの全貌について解説していきます。

ソフトバンクグループのやさしい企業分析!② ~決算を分析!大幅赤字の犯人は誰だ!?~

 

この記事を読むことで、

  • ソフトバンク・ビジョン・ファンドの概要とこれまでの累計投資成果
  • ソフトバンク・ビジョン・ファンドはソフトバンクグループにとってどのような存在なのか

を知ることができます。

 

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、ソフトバンクグループの連結対象の中で非常に重要なポジションであり要であり、ソフトバンクグループの分析には欠かせない存在です。

わかりやすさを重視するために要点のみをかいつまんでやさしく解説していきます。

肩の力を抜いて企業分析を楽しむことに重点を置いて読み進めていってください。

この記事では、会社名などを下記のように表現します。

  • ソフトバンクグループ株式会社:SBG(ソフトバンクグループ)
  • ソフトバンク株式会社:SBKK(ソフトバンクかぶしきかいしゃ)
  • ソフトバンク・ビジョン・ファンド:SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)

 

ソフトバンク・ビジョン・ファンドとは

チェス 駒

ソフトバンク・ビジョン・ファンドとは

SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)とは
SBGが威信をかけて2017年に開始した、総額10兆円を超える運用資産を持つ、非上場のAI(人工知能)企業を投資対象とするプライベート・エクイティ・ファンドにより運用される投資ファンドです。


プライベート・エクイティ・ファンドとは、複数の投資家から集めた資金を元手に事業会社や金融機関の未公開株を取得し、同時にその企業の経営に深く関与して企業価値を高めた後に売却することで高い収益率を獲得することを目的とした投資ファンドのことです。

ソフトバンク 組織図

第1回に掲載したSBGの組織図(上図)では左側に書いてあるものです。

 

SVFの投資先は88社にものぼり、うち8社が既に上場(IPO)をしています。

投資先で有名な企業は、

自動車配車サービスやオンラインフードデリバリーサービスを提供している

  • アメリカの「Uber Technologies(便宜、Uber)」や、

チームコミュニケーションツールである

  • 「Slack Technologies(便宜、Slack)」

などがあります。

 

ソフトバンク・ビジョン・ファンド 一覧

ほかにもご存知の企業がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

豆知識
*SBGは第1回で解説をしたとおり次々に投資を行いますし突然保有している株式の売却を行うこともあります。また、グループ内で保有している株式を頻繁にグループ内の別企業に移動させることがあるため、先ほど掲載したSBGの組織図と、上にあるSBGの2020年5月18日の決算説明会で使用されたSVFの投資先企業はあくまでその時点でのものとなります。

 

UberやSlackのように今や世界的に有名で時価総額も100億ドルを超えるような企業に早くから目をつけて投資を行なってきた先見の明のあるSVFですらあれほどの赤字を出すような事態になっているというのは驚くべき事態です。

続いては、SVFの資本構成について見ていきましょう。



SVFの資本構成

まずはこちらの資料をご覧ください。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド 資本構成

 

総額10.7兆円の運用資産を保有しているSVFですが、そのうちSBGが3.1兆円の自己資金を出資しています。

LPとは「リミテッド・パートナー」のことで、出資者や投資家のことを指します。

 

SVFは4.4兆円を優先出資という形で募り、SBGの出資分を含めた6.4兆円を普通出資という形で募りました。

デットとエクイティという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、

  • デットは「負債」
  • エクイティは「株主資本」

のことです。

SVFはデットとエクイティの両方を使って資金調達を行いました。

 

why
優先出資の4.4兆円は、サウジアラビア政府系のパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)やアブダビ首長国のムバダラ開発公社などがLPとなっているよ。

 

優先出資のユニットは、元本保証かつ運用収益にかかわらず年率7%の定率分配を得られるものの運用収益の分配を得ることはできません。

また、普通出資に対して優先的に返済されるので、各LPはダウンサイドリスクを抑えることができます。

 

ダウンサイドリスクとは
損失を受ける可能性のことです。

 

普通出資のユニットは、優先出資のユニットと違い元本保証もなければ定率分配を受けることもできず、ファンドの運用収益から手数料を差し引いた収益のみを得られます。

つまり、各LPはダウンサイドリスクをテイクする代わりにアップサイドリスクを狙うことができます。

 

アップサイドリスクとは
利益が発生する可能性のことです。

 

優先出資ユニットのLPに対しては4.4兆円の7%を毎年定率で分配することになるわけですので、運用収益に関係なく年間で約3,000億円の分配金を支払わなくてはならないというものすごい契約内容となっていることがこの資料から読み取ることができます。

続いては、SVFの具体的な投資成果について見ていきましょう。



ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資成果

この章では、4枚の資料をもとに、SVFの投資成果を考察していきます。

まずはこちらの資料をご覧ください。

企業価値が増加した26社

ソフトバンク・ビジョン・ファンド 投資成果

SVFの投資先88社のうち、企業価値が増加した企業が26社です。

増加した合計の企業価値は1.4兆円で、そのうち0.5億円は実現益、0.9兆円が評価益です。

実現損益とは
「確定損益」とも呼ばれ、保有している銘柄を売却した際に発生する利益のことです。

評価損益とは
保有している資産の購入時の価格と現在の価格(時価)との差額のことです。

保有資産の価格が購入時に比べて上昇している場合は「評価益がある」と言い、下がっている場合は「評価損がある」と言います。

実現損益と評価損益の関係は、例えば評価益がある資産を売却することで、その評価益が初めて実現益となります。

why
このふたつの用語はSBGを分析する際の非常に重要な用語なので、しっかりと覚えておこう!

企業価値が減少した47社

次はこちらの資料をご覧ください。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド 投資成果

 

SVFの投資先88社のうち、企業価値が減少した企業が47社です。

減少した合計の企業価値は1.5兆円ですが、すべて評価損となっています。

つまり評価が減少した企業の株式はまだ売却していないため、実現損にはなっていないということです。

 

参考にですが、一般的に非上場企業への投資、いわゆるプライベート・エクイティ投資は投資をした時の企業のフェイズにもよりますが10社に1社でも上手くいけばすばらしい成績であると言われています。

そんな中でSVFは88社のうち既に8社が上場をしており、合計で26社もの企業が評価益を出しているということですから今のところはすばらしい好成績であるということが言えます。

投資損失、0.1兆円

次はこちらの資料をご覧ください。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド 投資成果

SBGは決算で、SVFは累計の投資成果として通算で0.1兆円の投資損失しか出ていないと主張しています。

ここで、「あれ?」と思われた方はすばらしいです。

先ほど見てきたSBGの決算資料ではSVFでものすごい赤字が出ているという内容があったので、これでは数字がまったく合いません。

それにはこの資料がこれまでの累計投資成果を出しているのに対して先ほどの決算資料にある数字はあくまで2019年度の決算だからという理由と、

会計上のルールによって複雑になっているからという理由の2つがありますが、

この内容は第4回で詳しく解説していくので今のところは「なんか変だな〜」という程度で理解をしておいてください。

累計投資成果

最後に、SVFの累計投資額に対する累計投資成果を見ていきましょう。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド 投資成果

SVFは総額10.7兆円の運用資産のうち8.8兆円を実際に投資しています。

これは著者の考えですが、

プライベート・エクイティ・ファンドがエグジット(IPOもしくはM&A)を目的として非上場企業に投資をしていくという特性上、

投資をしてからエグジットをして実現益として現金が入ってくるまでに最短で半年や数年程度の時間がかかります。

ですので、10.7兆円をギリギリまで投資をしてしまうと追加で投資をする必要性が出た場合や定率分配をするための資金がなくなってしまうなどの理由により、

意図的に2兆円近くの資金を余らせているのだと考えています。

 

私はこれらの運用状況や累計投資成果を見て、

運用資産を2兆円近くも残したうえで8.8兆円の累計投資額に対してまだ0.1兆円の投資損失(-1.14%)しか出ていないことから、

そこまで危機的な状況ではないのではないかと考えています。

 

しかし、現在のSVFの運用状況やこれまでの投資成果をもとに今後どうなるかというのを考察する際に必ず注意すべき点があります。

それは、当たり前の話なのですがSVFの運用状況や投資成果が80社を超える投資先企業の企業価値の増減に100%依存しているということです。

 

企業の業績とは一時的によくなることもあれば突然悪化してしまうこともありますし、悪化した後に立て直せないまま倒産してしまう企業もたくさんあります。

そんな不安定で安定させることが非常にむずかしい「企業の業績」に一定程度の相関がある「企業価値の増減」というものに100%依存しているプライベート・エクイティ・ファンドであるSVFは、当然不安定であると言えるでしょう。

 

つまり常に80社を超える様々な業種の投資先企業の経営状況の善し悪しに左右され続けるのがSVFです。

安定性という面では例えばSBKKが自社で提供している今や社会全体のインフラである通信事業の業績と比較すると非常に不安定であると言えます。

このことから、SBGの業績も非常に不安定であると言えます。

なぜなら、SVFは大きなリターンを狙える反面大きなリスクや不安定さと常に付き合っていかなくてはならないハイリスクハイリターンな事業であり、さらにSBGの業績はそんなSVFに割合的にかなり依存している状況になっているためです。



まとめ

いかがでしたでしょうか。

第3回では、SBGが2017年に開始したSVFとは一体何なのかというところから、投資先企業や資本構成、累計投資成果などを順にやさしく解説していきました。

 

今回のご説明で、SBGを分析する際にSVFの分析は欠かすことができない要素だということにご納得いただけたかと思います。


しかし、ここでまたひとつ問題があります。

どういった問題なのか、なんとなくわかる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

その問題とは、SVFを分析する際にはSVFの投資先の企業を分析する必要があるということです。

純粋持株会社であり、投資会社的な側面を強めてきているSBGを分析する場合、その中身であるSVFを分析する必要があります。

それと同じように、SVFを分析する際にはその中身であるSVFの投資先企業を分析する必要があるのです。

ただ、投資先企業の88社のうち8社は上場会社のためしっかりとした情報開示がなされていますが、残りの80社は非上場会社であり情報が十分に出ていない会社もたくさんあります。

ですので、すべてを仔細に分析するのは実質不可能 + 「やろう」と試みても果てしない時間を要します。

 

そこで、第4回ではSVFの投資先企業でもっとも話題になっている「WeWork」という企業を取り上げて、「WeWork」の概要や「WeWork」の華々しいこれまでについてやさしく解説をしていきます。

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