「fxは仕事ではないし、税金を払わなくてもばれないのでは?」
fx取引をしている方の中には、こんな考えを持っている方もいるかもしれませんね。
結論からいうと、fxの税金は、ある一定の利益額を超えると課税対象となり、申告しないと税務署にほぼ100%ばれます。なぜなら、脱税を把握するために次の3つの対策が行われているからです。
- fx業者や金融機関が税務署に「支払調書(国外送金等調書)」を送っている
- fx取引時にマイナンバーを登録させている
- 「租税条約等の情報交換規定」によりfx業者が情報提供をする
そして、課税対象なのに無申告だと、次のような大きなペナルティが課されます。
- 税務署から「お尋ね文書」が来て税務調査が始まる
- 期限までに申告せず未納にしたら「無申告課税」を取られる
- 期限までに納税しなければ「延滞税」が課せられる
- 故意に未納した場合は「重加算税」が課せられる
「でも、fxの税金を申告しなくてもばれないと聞いたこともあるけど…?」という人もいるかもしれませんが、それは間違いです。
実際、税務署はfxの脱税を把握する体制を強化しています。その1つが、上記に挙げた「租税条約等の情報交換規定」です。平成27年(2015年)に改正された「税制改正」の1つとして施行されて以来、fxの脱税の告発件数が増えているのです。
出典:平成30年度 査察の概要 2 重点事案への取組 (3) 国際事案|国税庁
ここでは、上記に挙げたfxの税金がばれる理由と未納にすると起こることを詳しく解説していきます。
この記事を読めば、fxの税金を脱税することの危険性をお分かりいただけるので、ぜひ一読ください。
1. fxの税金は申告しないと税務署にばれる!その理由3つ

冒頭でも説明した通り、fx取引で得た利益は、ある一定の金額になったら申告をしないと税務署にばれます。
申告をしないと税務署にばれる理由は、次の3つです。
- fx業者や金融機関が税務署に「支払調書(国外送金等調書)」を送っているため
- fx取引時にマイナンバーを登録しているため
- 「租税条約等の情報交換規定」によりfx業者が情報提供をするため
1つずつ説明していきましょう。
1-1. fx業者や金融機関が税務署に「支払調書(国外送金等調書)」を送っているため
fx業者は、顧客のfx取引における損益などが記された「支払調書」を税務署に送っています。
fx業者が税務署に支払調書を送っているのは、適正な課税を目的として平成20年に「所得税法改正」が施行されたためです。この所得税法改正の中で支払調書制度の整備が行われ、fx取引を扱う業者は支払調書を税務署に提出することが義務付けられました。
税務署に送る支払調書には、顧客の名前と住所、顧客への支払料金などが記されています。
【支払調書の見本】

出典:[手続名]先物取引に関する支払調書(同合計表)|国税庁
支払調書は、顧客の利益額を問わず税務署に提出されます。つまり、利益額が少なくても、申告していなければ税務署に必ずばれることになるのです。
ここで「海外fxで取引をしていたら、支払調書が税務署に送られることはなく、ばれないのでは?」と思われる方もいるかもしれませんね。
しかし、海外fxで取引をしている場合でも税務署にばれます。その理由は、「国外送金等調書」が税務署に送られるからです。
国外送金等調書というのは、金融機関が次のようなケースに作成して税務署に提出書類を指します。
- 顧客が銀行などの金融機関を通じて国外へ送金し、その金融機関に対して告知書を提出したとき
- 顧客が銀行などの金融機関を通じて国外からの送金を受け取るとき、その金融機関に対して告知書を提出したとき
そして国外送金等調書には、次の内容が記載されます。
- 送金者
- 受領者
- 顧客の口座番号
- 取次金融機関
- 送金目的
- 送金の金額
など
【国外送金等調書の見本】

つまり、海外fxで得た利益を日本の金融機関に送金すると、「誰にいくら送金があったか」が国外送金等調書を通して税務署に知られることになるのです。
国外送金等調書は、海外の金融機関から日本の金融機関に100万円以上の送金があった場合に税務署に提出されますが、「海外fxの利益が100万円以下の場合は、ばれない」というわけではありません。
その理由は「1-3. 「租税条約等の情報交換規定」によりfx業者が情報提供をするため」で詳しく説明します。
1-2. fx取引時にマイナンバーを登録させている
fx業者から登録を求められた「マイナンバー」で税金がばれることがあります。税務署に提出する支払調書にマイナンバーの記入が求められているからです。
【支払調書のマイナンバー記入欄】

国外送金等調書にも、マイナンバーの記入欄があります。
【国外送金等調書のマイナンバー記入欄】

マイナンバーは、行政手続きの効率化や国民が生活に困ったときに必要な支援を受けられる社会を実現するために作られた制度ですが、脱税を把握することにも役立たれています。
マイナンバーがあることで、個人と書類の整合性が容易に行えるようになったからです。
このため、マイナンバーが支払調書や国外送金等調書に記載されれば、脱税もすぐにばれるのです。
1-3. 「租税条約等の情報交換規定」によりfx業者が情報提供をするため
「1-1. fx業者や金融機関が税務署に「支払調書(国外送金等調書)」を送っているため」でも説明しましたが、海外fxで取引をしている場合は、日本の金融機関へ100万円以上の送金がないと国外送金等調書が税務署に送られません。
このため、「海外fxで取引していれば税務署にばれることはない!」と思われるかもしれませんが、それは間違いです。
なぜなら、「租税条約等の情報交換規定」により、fx業者は各国の税務局に情報提供することが求められているからです。
租税条約等の情報交換規定というのは、平成27年(2015年)の「税制改正」(平成29年1月1日施行)により定められたもので、その内容は次の通りです。
参考:租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律 (昭和四十四年法律第四十六号)|e-Gov(電子政府の総合窓口)
つまり、海外fxで取引をしていることは、この租税条約等の情報交換規定により税務署に知られることになり、税金もばれることになるのです。
2. fxの税金を未納にするとどうなる?実際に起こることを解説

申告をしなくても税務署にばれてしまうfxの税金ですが、課税から逃れるために未納にしてしまうとどうなってしまうのかを知っていますか?
税金を未納にすると起こることは、次の4つです。
- 税務署から「お尋ね文書」が来て税務調査が始まる
- 期限までに申告せず未納にしたら「無申告課税」を取られる
- 期限までに納税しなければ「延滞税」が課せられる
- 故意に未納した場合は「重加算税」が課せられる
順番に説明していきましょう。
2-1. 税務署から「お尋ね文書」が来て税務調査が始まる
fxの税金を未納にしていると、税務署から「お尋ね文書」が来て税務調査が始まります。
お尋ね文書というのは、業者などとの取引内容や申告内容に関することを確認する目的で作成される文書の1つ。fxの税金に関しては、申告していないと「所得状況のお伺い」として税務署から文書が送られます。
この税務署からのお尋ね文書が届いた後に、お尋ね文書に同封されている書類の返送、税務署職員との面談などを通して税務調査が始まるのです。
「税務署は税金を多く取るため、3年は泳がせる」といったことも耳にしている方もいると思いますが、これは正しいとは限りません。税務署からのお尋ね文書は、いつ届くかは明確に決められていないからです。
お尋ね文書が届く時期については、国税庁のホームページでは以下のように説明されています。
実地の調査を行う場合の事前通知の時期については、法令に特段の規定はなく、また、個々のケースによって事情も異なりますので、何日程度前に通知するかを一律にお示しすることは困難ですが、調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行うこととしています。 |
引用元:税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)|国税庁
いつお尋ね文書が届くか分からないにしても、fxの税金を申告していなければ、いつか必ず税務調査が始まることは念頭に置く必要があります。
2-2. 期限までに申告せず未納にしたら「無申告課税」を取られる
期限までに必要な確定申告をせず未納にした場合、加算税(適切に申告されなかったときに課される税金)の1つである「無申告課税」を取られます。
無申告課税は、納付すべき税金に対して50万円までは15%、50万円以上は20%の税金が、納めるべき税金にプラスされて課せられます。
ただし、例外もあります。
- 確定申告期限から1カ月以内に期限後申告すれば課されない
- 税務調査を受ける前に期限後申告をした場合は、5%に軽減される
- 期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合は課されない
【無申告課税について詳しく知りたい場合は、こちらを参照】
2-3. 期限までに納税しなければ「延滞税」が課せられる
期限までに納税しなかった場合は「延滞税」が課せられます。具体的には、主に次のようなケースに該当します。
- 確定申告後に決められた期限までに税金を納めないとき
- 税務調査によって納付すべき税金があるとき
延滞税は、法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて税率が変わります。
- 法定納期限の翌日から納付日までが2カ月以内の場合…7.3%
- 法定納期限の翌日から納付日までが2カ月を超えた場合…14.6%
税務調査によって「故意による未納でない」と判断された場合は、延滞税と無申告課税の2つを納めれば、これ以上のペナルティが課されることはありません。
【延滞税について詳しく知りたい場合はこちらを参照】
2-4. 故意に未納した場合は「重加算税」が課せられる
税務調査で「未納が故意である」や「所得を隠蔽して悪質だ」と判断されると、延滞税と無申告課税に加えて「重加算税」が課せられます。
故意に申告せず未納にした場合に課される重加算税は、納税額の40%の税金が課されることになります。
【重加算税について詳しく知りたい場合はこちらを参照】
確定申告して納税すべきと知っていながら未納にした場合は、とても重たいペナルティが課されることは覚えておきましょう。
3. fxの税金は脱税することはできない!

fxの税金を脱税することは不可能です。なぜなら、ここまで説明した以下の理由があるからです。
- fx業者は、顧客の損益を報告する「支払調書」を税務署に送る義務がある
- 日本の金融機関は、海外の銀行からの送金があったことを「国外送金等調書」として税務署に送る義務がある
- fx取引をする際、個人と文書の整合性が取れる「マイナンバー」の登録が求められている
- 「租税条約等の情報交換規定」により、各国の税務局は金融口座情報を交換することが求められる
上記は法律によって義務付けられていることですから、脱税は税務署に必ずばれるのです。
さらに、国税庁のホームページでは、fxの税金未納について告発した事例も掲載されています。
【告発事例①】
海外取引を利用した悪質・巧妙な事案や海外に不正資金を隠すなどの国際事案に積極的に取り組み、平成30年度は4件を告発しました。
国際事案では、租税条約等に基づく外国税務当局との情報交換制度を活用しました。 |
引用元:平成30年度 査察の概要|国税庁
【告発事例②】
査察調査を受け、嫌疑者が海外へ逃亡したまま、長期にわたり海外に潜伏した事案について、関係機関との連携により嫌疑者を捕捉し、告発に至りました。
【事例】 Aは、外国為替証拠金取引(FX取引)により多額の利益を得ていたものですが、インターネットを利用した自動売買ソフトを用いて、二十余名もの他人名義で同取引を行うことにより所得を隠し、所得税の確定申告を一切せずに納税を免れていました。 |
引用元:平成30年度 査察の概要|国税庁
税務署が実際に脱税調査をしていることをお分かりいただけるでしょう。
fxで利益が出て課税対象となるのであれば、正しく確定申告をして納税しなければなりません。
4. fxの税金を支払うために知っておくと良い知識

ここまでお読みになって、fxの税金を支払うことの必要性を感じていただけたと思います。
そこでここからは、fxの税金を支払うために知っておくと良い次の3つのことをお教えしますので、参考にしてください。
- fxの税金はいくらから課せられるか?
- 国内fxと海外fxの税率と税金の目安
- fxの税金対策
順に説明していきましょう。
4-1. fxの税金はいくらから課せられるか?
fxの税金がいくらの利益から課せられるかは、給与収入の有無によって変わってきます。
給与収入の有無 | 対象者 | 課税対象となるfxの利益額 |
あり | ・会社員 ・年金生活者 ・パートやアルバイト |
20万円〜 |
なし | ・専業主婦 ・パートやアルバイトをしていない人 ・fx取引を専業としているフリーランス |
48万円〜 |
「給与収入がある」というのは、会社から給与をもらっていることを意味します。公的年金収入を得ている人も、給与収入がある人とみなされます。
「給与収入がない」というのは、会社から給与をもらっていないことを意味します。
ただし、次のような人は上記に該当しません。
①給与収入があっても…
・年間給与が2,000万円以上の会社員、あるいは年金収入が400万円以上の年金生活者
→ fxの利益額に関わらず課税対象
・年間収入が55万円に収まるパートやアルバイト
→ fxの利益が48万円を超えたら課税対象
②給与収入がなく…
・fx以外に収入がある自営業・フリーランスの人
→ 「fxの利益とfx以外の収入-経費」が48万円を超えたら課税対象
そして、fxの利益が確定申告の対象外でも、住民税の申告は別途必要です。
4-2. 国内fxと海外fxの税率と税金の目安
fxの税率と税金は、国内fxと海外fxで異なります。
【国内fxと海外fxの税率と税金の計算方法】
国内fx | 海外fx | |
税率 | 一律20% (所得税15%+住民税5%) ※2037年までは20.315% |
所得税:累進課税 ※所得に応じて税率が変わる 住民税:一律で10% |
税金の 計算方法 |
申告分離課税 ※fx以外の雑所得とは 別に税額が計算される |
総合課税方式 ※課税対象となる全所得の合計金額で 税金が計算される |
国内fxの場合は、他の所得とは別で税金の計算が行われます。税率はいくら利益が出ようと一律で20%です。ただし、2037年までは復興特別所得税の0.315%がプラスされるため、20.315%が税率となります。
一方、海外fxの場合は、他の所得とfxの利益との合計金額で税金が計算されます。税率はその合計所得金額に応じて変わります。合計所得金額が大きいほど税率が高くなり、納める税金も高くなりますが、所得控除があるため国内fxの税金と比べると安くなることもあります。
以下は、国内fxと海外fxの利益に対する税金目安です。
【国内fxと海外fxの税金の目安】
fxの利益額 | 国内fxの税金の目安 | 海外fxの税金の目安 |
50万円 | 約10万円 | 約7万5千円 |
100万円 | 約20万円 | 約15万円 |
150万円 | 約30万円 | 約20万円 |
200万円 | 約40万円 | 約30万円 |
4-3. fxの税金対策
fxの利益が課税対象となるときに行える税金対策としては、次の3つがあります。
- fxのために購入した項目は全て経費として計上する
- 損をしても確定申告する
- 複数fxの取引の損益はまとめて申告する
上記3つが節税となる理由は、以下の通りです。
税金対策 | 節税となる理由 |
①fxのために購入した項目は全て経費として計上する | fxの利益は雑所得になるため、経費の計上が認められている |
②損をしても確定申告する | 損失の「繰越控除」を受けられる |
③複数fxの取引の損益はまとめて申告する | 同じ雑所得として認められている |
課税対象となるfx利益額や税金の計算方法、税金対策については、以下の記事で詳しく説明しています。 fxの税金についての理解を深めたい方は、ぜひご覧ください。
5. fxの税金を払えないときの対処法

fxの税金は支払うべきですが「大きな損失をしてしまって税金を払えない…」という状況に直面することもあるかもしれません。でも、そんなときでも税金を払わないで放っておくのはNGです。
もし税金を支払えないときは、税務署に相談しましょう。税務署に相談することで、「延納」を届け出たり、「猶予制度」を利用したりして対処できる可能性があります。
対処法 | 内容 |
延納を届け出る | 税金の半分を期限までに支払い、残りの税額を分割して支払う ※延納を希望するときは、確定申告の書類に記載する ※延納期間中は、利子税がかかる参考:手順5 延納の届出|国税庁 |
猶予制度を利用する | 以下の状況の場合、税務署に申請すれば最大1年間納税が猶予される(納税の猶予) ・一時の納税によって事業の継続や生活が困難になるとき ・災害で財産を損失したとき など参考:第2章 第1節 通常の納税の猶予の要件等|国税庁 |
税務署には、無理なく税金を支払える方法を考えてから相談するのがおすすめです。
そうすることで、税金を支払う意志を税務署に示すことができ、延納や猶予制度も活用しやすくなります。
まとめ
fxの税金は、税務署に必ずばれます。ばれるのは、次の3つの理由があるからです。
- fx業者や金融機関が税務署に「支払調書(国外送金等調書)」を送っている
- fx取引時にマイナンバーを登録させている
- 「租税条約等の情報交換規定」によりfx業者が情報提供をする
そして、課税対象なのに無申告だと次のようなことが起こります。
- 税務署から「お尋ね文書」が来て税務調査が始まる
- 期限までに申告せず未納にしたら「無申告課税」を取られる
- 期限までに納税しなければ「延滞税」が課せられる
- 故意に未納した場合は「重加算税」が課せられる
もし、どうしても税金が支払えない場合は、税務署に相談すれば延納できたり、猶予制度を利用できたりして対処できる可能性があります。
不正に脱税すると罪に問われる恐れもあります。fxの利益が課税対象である場合は、必ず確定申告をして納税しましょう!
【税務調査について詳しくは、国税庁が公表している以下のパンフレットを参考】
税務手続について(近年の国税通則法等の改正も踏まえて)